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NEWS REPORT32
装い「普通」取り戻す
日本ヘアエピテーゼ協会鳥取支部 横川千歳さん
鳥取県倉吉市で「女神(め・がみ)美容室」(0858・22・4098)を営む美容師の横川千歳さん(37)は、抗がん剤や放射線による副作用で脱毛した人たちに、医療用かつらを作っている。
昨年1月、乳がんが見つかった。一緒に美容室を切り盛りしていた母も大きなショックを受けていた。その5日後、母が心筋梗塞(・・こう・そく)で急逝した。
美容室を再開しなければいけなかった。だが左の乳房を取った手術の後遺症で、左腕に激痛が走り、腕が上げられなくなった。前のように働けるのか。危機感に襲われた。
乳がんを患った美容師は、どんな仕事をしているのか。インターネットで調べ、脱毛前の髪形をかつらで作る「再現美容」に取り組むNPO法人「日本ヘアエピテーゼ協会」を知った。かつらや下着など、治療の影響で必要になる「補正具」への費用補助を求める署名活動もしていた。
横川さんは腕のリハビリをしながら協会でかつらの作り方を学んだ。店は、中国5県で唯一、協会認定の「再現美容室」となった。
普通のかつらは、生えている髪に金具で留めるものが多い。医療用は裏側にメッシュ素材を使うため、蒸れにくく滑りにくい。人工毛と人毛をまぜたかつらにはさみを入れ、髪形を整える。料金はどんな髪形でも12万6千円。
横川さんは乳がん再発を防ぐため、女性ホルモンの分泌を抑える注射を打っている。そのせいで洗髪時の抜け毛や髪が細くなる悩みを抱えている。かつらを注文した患者と、互いの悩みを言い合う。
乳房だけでなく髪の毛も失う乳がん患者のショックは大きい。「きれいになりたいというより、みんな普通の生活がしたいだけなんです」
朝日新聞/中国地方版(2010.11.18)
NPO法人 日本ヘアエピテーゼ協会 報道資料