がん患者の髪 取り戻す輝き
「再現美容師」大宮の毛内さん
がん治療で髪を失った女性たちをサポートするため、さいたま市大宮区で美容室を開く毛内英克さん(46)が、「再現美容師」として活動している。
髪を取り戻し、少しでも悩みを和らげたいと願う。
毛内さんが取り組むのは、抗がん剤治療などの影響で髪が抜けた女性たちを対象とした、ウィッグ(かつら)を使ったケアだ。
ウィッグは、フィット感やヘアアレンジを患者それぞれの好みに合わせるセミオーダー。
以前の姿を自然な形でよみがえらせる。
きっかけは、身近な人との別れだ。
2011年には、美容師の道へ導いてくれたいとこが、その前年には美容師の師匠が、相次いで肺がんで亡くなった。
「美容師として、できることは何だろう」。
そう思い悩んだときに知ったのが、美容師らによるがん患者支援のNPO「日本ヘアエピテーゼ協会」(東京)だった。
かつらのケア方法を学び、12年から同協会の埼玉支部をスタートさせた。
美容室の仕事の傍ら、県内の病院に赴き、同協会のウィッグの良さを説明して回った。
あくまで支援活動のため、かつらメーカーの相場が数十万円のところを、12万6千円と価格は抑えめ。1年間は無料で手入れをし、自分の髪が生えるまでサポートするという。
ウィッグを付けることに不安や抵抗がある女性もいる。
ただ、ウィッグは人毛と人工毛の混合で、自然なつやを再現している。
毛内さんは「かつらへの不安を安心に変えたい。
外出する勇気を取り戻すためのお手伝いが出来れば」と話す。
お客さんとは、会話を通じてウィッグをセットする。
落ち込んだ様子の女性客が、ほっとして涙を流すことも。
「ウィッグだけではない、内面のフォローも必要なんだと思います」
同協会の再現美容師は現在、全国に40人。
埼玉支部では毛内さん1人で活動している。
問い合わせは、毛内さんの美容室「K’Palette(ケーパレット)」(048・643・6061)。
朝日新聞デジタル
NPO法人 日本ヘアエピテーゼ協会 報道資料