がんになっても「よくばり」でいよう!
医療用ウイッグの専門家・再現美容師
抗がん剤や放射線治療の副作用。多くの人が気にするのは”脱毛”のことでした。そんなとき、カツラとは違う”医療用ウイッグ”で自分の髪を”復元”するプロ、再現美容師。大阪のヘアサロン・hair’s ash(ヘアーズアッシュ)でお話を伺いました。
”髪”のことならなんでも応えたい
国立がん研究センターが調査した、抗がん剤治療中に辛いこと。一番多かった回答は「副作用で髪が抜けてしまうこと」でした。医療用ウイッグ(ヘアエピテーゼ)とは、そんな脱毛に対応するためのウイッグ。
「ファッション用のウイッグと違って、全く地毛が無くなってしまった時期にも使うものですから、肌に負担がかからない作りです。ふつうの髪と同じように、ヘアアイロンも使えるようになっています」
そう話してくれたのは、ヘアーズアッシュオーナーの八木広樹さん。
医療用ウイッグを扱うプロ、”再現美容師”です。
もともとは一般の美容師だった八木さんですが、今から9年前、「NPO法人日本ヘアエピテーゼ協会」で再現美容の取り組みを始めました。
「美容師は髪を扱う仕事ですが、『髪が抜けたら専門店へ』というのは寂しい。脱毛でもウイッグでも、髪のことならなんでも応えられるようになりたかったんです」
いまでは通常の美容院の中に専用のスペースを設け、脱毛に悩む人に対応しています。
売って終わり、ではない
女性特有のがん・乳がんや卵巣がんは比較的若い世代でも発症することが多いといわれています。実際に八木さんの元に訪れるのも、20代〜50代以上と幅広い世代の女性。治療の副作用について医師から説明を受けてすぐ、ウイッグの相談に来られるそうです。
「特に女性の患者さんは脱毛のことを気にされますが、忙しいお医者さんはなかなかそこまで手が回らない。その分、髪の不安はここで話してもらえれば」
とはいえ、再現美容師の仕事はウイッグを渡して終わり、ではありません。
治療前
・抗がん剤治療前の相談・制作に向けてのスケジュールをたてる
・脱毛が目立たないよう、地毛もショートヘアーに
・医療用ウイッグ制作
治療中
・髪が抜け始めたらウイッグデビュー。脱毛の量に合わせてサイズを調整していく
・治療中はウイッグをカットしたりアレンジしたり、自分の髪のように楽しめる
・ウイッグのケア以外にも、副作用による外見の変化(まつ毛、眉毛の脱毛や爪の黒ずみ、二枚爪など)に対応してネイルやつけまつ毛のレクチャーも
治療後
・治療が終わり、地毛が伸び始めたらそれも整えていく
(治療後の髪は細く、クセがついているのでケアが必要)
・治療後のデリケートな肌に合わせたケア、ヘアカラーなど、ウィッグ卒業に向け約1年半ほどかけて元の髪に戻していく
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講演だけでなく、リレーフォーライフなどの、がんチャリティーイベントに参加することも
美容師だからできること
再現美容師として患者さんの前や医療機関で説明会を行うこともありますが、「自分は”医療者”ではなく、あくまでも”美容師”」という八木さん。
「ウイッグのケアに来る方にも、ふつうの美容院と同じ感覚で使っていただいています」
カットやアレンジは、実際に患者さんがウイッグを着けた状態で行います。
「始めはうつむいていた人が、『今度はショートヘアーに』『巻き髪にしてみたい』と徐々に明るい顔になっていく。そうしておしゃれに”よくばり”なってくれるのが嬉しいんです」
また、副作用による肌のくすみ、シミなどをかくすためのメイクや、成人式や結婚式のためにウィッグをヘアアレンジすることもあります。
「特別な日のヘアアレンジは美容師だから出来ることだと思います。
『ウィッグだから出られないかと思っていた、可愛くアレンジしてもらってとても嬉しい』と言っていただいたときは本当に再現美容師になって良かったと実感しました」
NPO法人日本ヘアエピテーゼ協会指定サロン・ヘアーズアッシュ闘病中でも”ふつう”のおしゃれを。NPO法人日本ヘアエピテーゼ協会指定サロン・ヘアーズアッシュではがん以外の脱毛症の方の相談も受け付けています
お近くのサロンは 日本ヘアエピテーゼ協会 のサイトからお探しいただけます
医療情報サイト「アイメディ」
NPO法人 日本ヘアエピテーゼ協会 報道資料