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がん治療「美」で後押し

NPO法人日本ヘアエピテーゼ協会盛岡店

 
抗がん剤治療の副作用などで髪が抜け落ちてしまった人のために、かつらを使って元の髪型に近づける「再現美容」に取り組む美容師が、全国で約50人いる。盛岡市の美容室もその一つだ。
 
ーー「再現美容」に取り組むきっかけを教えてください。
2012年に10年以上通っていた女性客からカット中に突然、乳がんを告白されました。かつらの相談を受けましたが、ただ「分かりません」としか答えられませんでした。髪のことならなんでも知っていると思った自分が情けなかった。
そんな時、病気や事故で髪の抜けた人向けの医療用かつらを提供するNPO「日本ヘアエピテーゼ協会」(東京都品川区)の活動を知り、講習会に参加しました。かつらのカット方法や抗がん剤治療での副作用に悩む患者特有の心理などを学び、2013年4月から店で再現美容を始めました。
ーー医療用かつらの値段は?
税別で12万 〜13万円です。一般のかつらより毛量が多く、より自然に見えるよう素材や形が工夫されています。高いように思えますが、髪が抜け落ちた人向けのかつらは、大手メーカーだと20万〜70万円です。
医療用かつらなら、お客さんが望む髪型をじっくり話し合ってカットでき、使い始めてからも約1年間は無料で調整に応じます。病気で脱毛してその後治療がうまくいっても、地毛を取り戻すまでに約1年かかります。その間、薬の影響でむくんで変化した頭の形への対応や、地毛の調整も必要です。
ーー今まで何人のかつらをつくってきたのですか?
医者の紹介などで訪れた20〜70代、約60人のお客様のかつらを作りました。当初、悩んだのが女性客に病状を聞くことです。乳がんや子宮がんなど、男の私が聞いていいのかと抵抗がありました。
しかし、協会が主催した再現美容に取り組む美容師の交流で、ある仲間から「お客さんは死に関わる病気に常に不安を抱えている。話を聞いて少しでも気分を楽にすることが大切」と教わり、はっとしました。
ーー今後の課題は何ですか。
カット中、お客さんからたのお客さんの状態を聞かれます。同じ境遇の人の状況が気になるんでしょう。今後、店内でお茶会などを開いて、悩みを共有できる場をて影響できればと考えています。
お客さんの地毛が生えてかつらを「卒業」する日に見せる、あの笑顔は格別です。今後もたくさん見られるように、つらい時を忘れさせる「美」を提供します。

NPO法人 日本ヘアエピテーゼ協会 報道資料